今田新太郎も気になる。４６ 『「挫折」の昭和史』２

前回の続きです。
あんまり長くなって欲しくないんだけどなあヾ(--;)　入力するのが大変

ではまいる。

実は、十河には吉田益三という秘書が着いていたという。林に対する岩田愛之助のような立場であろうか。この吉田がしばしば外部と連絡を取っていた。この外部の連絡先の局番は銀座であり、それは実は海軍省の裏門付近にあった満州グループのアジトであった。ここは、石原、片倉衷、今田新太郎等の連絡場所で、彼らはここで林内閣に板垣を陸相として入閣させるべく案を練っていたのであった（黒田秀俊『昭和軍閥』２９９頁）。
ｐ．２７８

＜毎度恒例のあてにならない補足＞
・十河　十河信二　何回も既出なので説明略。新幹線の父。
・吉田益三　こういう人らしい
・林　林銑十郎　"越境将軍"。結構優柔不断な性格で、何で大将になれたか不思議な人。
・岩田愛之助　山口昌男氏曰く「林大将の周りに、愛国者社長という右翼浪人がついていた」（ｐ．２７７）後に林銑十郎を脅して、十河信二を林の組閣参謀から追い出してしまう。

参謀本部で「支那班」は特に質の低い軍人達の集合体であった。
ｐ．２７９

おおおおおい、今田ディするつもりかヾ(^^;)　※今田新太郎は支那班出身です。
なお、山口氏のこの記述は田村真作「石原莞爾の悲劇」『文藝春秋』１９５０年７月号を元にしていると思われる。

さて、次の引用はかなり長い。実は私のこのエントリと深く関係している。

東条が退陣する少し前、大本営参謀津野田知重捜査及び柔道家牛島辰熊等による東条暗殺未遂事件が起きた。
津野田は、旅順戦に際して乃木大将の参謀で水師営の会見でも軍使に立った人物としてその名を知られた津野田忠重少将の息子で、陸軍ではエリートの家系に属していたと言えよう。陸大５０期で、陸大を出ると間もなく少佐参謀として中国派遣軍総司令部に赴任した。津野田は、純粋な軍人気質の人物で、立身出世主義の官僚タイプの軍人ではなかった。津野田は、その当時太原の第一軍第３６師団参謀長であった今田新太郎少将の薫陶を受けた一人であった。今田は豪放で英俊、しかも緻密な頭脳の持ち主で、「陸軍の黒豹」と呼ばれた。当時中支派遣軍総司令部には辻政信も在任していた。
この今田新太郎は、関東軍で板垣・石原に近い立場にあった人物で「建国大学」の推進者の一人であった。「東亜連盟」の積極的メンバーとして、最後まで石原イズムの影響下にあった人物である。
(中略　ここには前掲の田村真作「石原莞爾の悲劇」『文藝春秋』１９５０年７月号からの長文引用が入りますが、また別の機会に紹介の予定)
今田新太郎は、その激烈な東条批判の故に、山西省から昭和１８年１０月、最前線のニューギニアに師団長として左遷、飛ばされることになった。
ｐ．３０１～３０２

ちょっと補足
・津野田忠重　正しくは「津野田是重」忠重は知重の兄ですな（山口氏の本って微妙にケアレスミスが多…げほげほ）確かに有名軍人の息子なのだが、是重の境遇を考えると一概にエリート軍人の家系とも言えないところが微妙(^^;)
・陸大５０期　今田は陸大３７期だったはずだから１３期下になる。※陸大は浪人があるので１３歳下にはならない，最も今田と津野田はストレートに合格しているようだが…
・薫陶を受けた一人　他に今田の薫陶を受けて津野田ほどの影響受けた奴がいるのか？…まあ津野田さんがかなり特異なことは否定しない…ヾ(--;)
・「陸軍の黒豹」　中江本でも何回も出てくるこの今田のニックネーム、いつから言われていたのかがはっきりしない…
・師団長　…にはなってない。山口氏の凡ミス。流石にこの時期に少将で師団長はないわー(※大戦末期は別)。この時、不幸にして第３６師団師団長に親補されたのは田上八郎中将ですね。

山西省の陸軍の第一軍首脳には反中央的独立性があったことを、青江舜二郎は次の如く述べている。
《私が軍服を着ていた山西省の第一軍の首脳部は、関東軍系統で、天津軍系統の北支方面軍とは最後までそりが合わず、第一軍は事ごとに"山西の特殊性"を主張して、ゆずらなかった。》（青江舜二郎『竜の星座－内藤湖南のアジア的生涯』朝日新聞社　１９６６年　２４８頁）
この山西的特殊性について、当時小隊長として従軍していた青江舜二郎は『石原莞爾』（読売新聞社　１９７３年　３６５－３８１頁）の中で、エン錫山の率いる山西軍と第一軍との間に奇妙な友情が存在していたことを語っている。
ｐ．３０２～３０３

但し、wikipediaによると、第一軍は北支方面軍の配下のようなんだが…　wikipedia「第１軍」　「北支那方面軍」

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今田関係分と思われるものはこれにて終了。
実はこの本、花谷正について興味深いネタを載せている。大日本帝国陸軍の最凶の人間のクズと言っても罰は当たらないだろうこの人物、実はネット上では余り紹介しているところが少ないので、項を変えてピックアップしていきます。