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拙HP「戦国島津女系図」の別館…のはず
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別件で検索中に見つけたのだが
今週の本棚:山内昌之・評 『島津久光=幕末政治の焦点』=町田明広・著  (講談社選書メチエ・1680円)  
◇「皇政回復」による維新実現の立役者
島津久光は明治維新の立役者でありながら、兄の斉彬と比べて凡庸な人物と理解されがちであった。しかし、町田氏はこうした通説を斥(しりぞ)け、久光を 「不世出の政治家」であり、「類稀(たぐいまれ)なる文化人・文学者」として評価し、斉彬も一目を置くほどの器量の持ち主だったと考える。
その片鱗(へんりん)は、著者が「久光四天王」と名付ける小松帯刀(たてわき)や大久保一蔵(利通)ら近臣を活用した中央政局への関与にまず現れる。なか でも大久保や西郷吉之助(隆盛)以上に小松こそ、久光の名代として明治維新を実現させたキー・パーソンだったことが重ねて強調されるが、これはすこぶる説 得力に富んでいる。
久光は「皇国復古」という標語のもとに、天皇権威の向上と天皇中心の政治体制への変革をテコに幕末の危機を乗り越えようとした。著者は、学問的に文久期前 半の久光らの政策を「皇政回復」として概念化し、慶応期の「王政復古」と区別している。久光は、文久二年から都合四回も時には大規模な兵を率いて入京し た。その度に中央政局は大きく転換し、久光はその存在感を次第に強めていった。兵力を率いた入洛(じゅらく)は、幕府との交渉で武威を誇るものでなく、久 光らの統制に従わぬ尊王志士の「義挙」つまり武装蜂起を妨げるためだったという。有名な寺田屋事件も薩摩藩内部の抗争の逸話などでなく、幕末政治史の本質 にかかわる悲劇だった点が強調される。
町田氏によれば、寺田屋事件こと「伏見義挙」の挫折は、長州の藩是を破約攘夷(じょうい)に転換し中央政局進出の発火点になり、薩長両藩不和の原因となっ たのである。久光の粛清は当然長州藩士に及ばなかったために、長州はその後の皇政回復運動の中心に成長したのだ。著者は、これこそ事件の隠れた政治的衝撃 だったと言いたいのだろう。久光は一部家臣を排除することで過激志士を嫌いな孝明天皇の信頼を得たが、薩摩の一体性を損なったことは否めない。その間隙 (かんげき)をついたのが長州であり、同士討ちをした誠忠組など薩摩の尊王派内部に久光への不満をもたらし、その後かれらの吸引極になったのが西郷でない かと私はにらんでいる。  明治維新に向けた最終段階の権謀術数に辣腕(らつわん)を振るったのは久光と徳川慶喜であった。しかし、王政復古から鳥羽伏見の戦いに至る革命のクライ マックスに久光は居合わせなかった。これで久光の中央政局での役割は終った。氏は久光帰国の理由として、足の疾患、藩内の率兵入洛反対派の説諭のためだっ たと語る。その名代格の小松帯刀も足痛のために薩摩に帰国していた。重要人物二人が中央政局を留守にしていた時に、回天の大事業が成ったというのは皮肉で もあり、謎めいている。このあたりに西郷や大久保や岩倉具視の詭計(きけい)がなかったのか否かにも興味を引かれる。
久光が天皇の下で公家や諸侯らの公議政体を構想し新政府の主要指導者になると確信していたと氏は指摘する。幕府や摂関制が廃止されて久光が依拠できる権威の源泉が消えたという説明にも納得できる点が多い。確かに王政復古の政変は久光の練った筋書きかもしれない。
しかし、久光ほど政治感覚に鋭敏な人間であれば、倒幕の決定と実行の現場に近い所にいなければ、大変革の功労者として手腕を振るえないくらいの政治メカニ ズムを知っていたはずだ。万一の保険なのかどうか、切所(せっしょ)に際会して権力変動の渦から離れた久光の真意はいぶかしい。読者に多くの想像や疑問を たくましくさせ、文章にも意気込みが感じられる好著である。
http://mainichi.jp/enta/book/news/20090322ddm015070008000c.html
毎日は比較的早く記事を削除する傾向があるので、念のため全文コピペ引用させていただきました。ご容赦の程。

気になった箇所があった。再度引用
重要人物二人(注:島津久光と小松帯刀)が中央政局を留守にしていた時に、回天の大事業が成ったというのは皮肉でもあり、謎めいている。このあたりに西郷や大久保や岩倉具視の詭計(きけい)がなかったのか否かにも興味を引かれる。
… 近年の幕末を舞台にした大河ドラマは、大政奉還→王政復古→戊辰戦争に至る流れを西郷隆盛・大久保利通・岩倉具視の共謀による陰謀!とする傾向が強い (『新選組!』『篤姫』)が、山内教授も大河の影響からは離れられないと言うことなのかな。ちなみにこの説は元鹿児島大学教授の原口泉氏も唱えていたよう に思う(というか、『篤姫』の考証は原口氏だから、むしろ火付け人か?)。


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