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拙HP「戦国島津女系図」の別館…のはず
ちょっと用事がありまして、10年ぶりぐらいに枚岡神社と言うところに行ってきました。
梅の名所なんですが…
何と去年病気のために全部切ってしまったとのこと(○。○)
…調べずに行ったので、とんだ肩すかし・゚・(´Д⊂ヽ・゚・
←これは拝殿前にあった恐らく唯一助かった梅の木…
ただ阪神電車が奈良まで直通するようになったので、神戸方面から非常に行きやすくなりました。枚岡神社最寄り駅の枚岡駅は各停しか止まらないので、40分間普通に乗りっぱなし(終点の阪神尼崎駅まで乗り換え接続がなかった!)のはかなりつらかったですが…。

さて、今はここの近所の石切神社(電車で2駅隣)のほうが大阪府民にもかなり有名なんですが、実は『延喜式』河内国一宮だったのはこっちの枚岡神社。非常に歴史が古くて格式のある神社なのですよ。それもそのはず、ここはあの奈良の春日大社の本家を名乗っているのだ。元々は枚岡神社にいた神様を春日大社に移したのだという。

ところが、現状を見てみるとちょっと不思議。
春日大社と枚岡神社では神様の祭り方の順番がやや異なるのだ。
枚岡神社本殿(拝殿付近から遠景) ちなみに西向き
春日大社:武甕槌命(たけみかづちのみこと)、経津主命(ふつぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売命(ひめのみこと)
枚岡神社:天児屋根命、比売命、武甕槌命、経津主命
春日大社も枚岡神社も藤原氏+中臣氏の氏神を名乗っているのだが、実は藤原氏(中臣氏)の氏神なのは天児屋根命と比売命(『日本書紀』などによる)。武甕槌命と経津主命は藤原氏(中臣氏)のご先祖とは全く関係のない神様なのである。関東にお住まいの方なら茨城県の鹿島神宮香取神宮はご存じの方+実際に行った人も多いと思うのだが、武甕槌命は鹿島神宮の神様、経津主命は香取神宮の神様。

何でこんな事になってるの?
実はこのネタ、大昔から気になっている人が多かったのか、よく論文のテーマとして取り上げられていました。
今ちらっとciniiで検索したら、ざっと見ただけでも
・春日大社の伝承について : 『古社記』所引、「宝亀十一年(七八〇)八月三日中臣殖栗連時風記之」を中心に  大友 裕二 神道史研究 = The shinto history review 65(1), 91-99, 2017-04
・ 春日大社の成立 : 都城郊外に分祀された外戚の神 脊古 真哉 同朋大学佛教文化研究所紀要 = Bulletin of Doho University Institute of Buddhist Culture (35), 176-145, 2015
・ 春日大社の創祀と藤原氏 大友 裕二 神道史研究 61(2), 246-261, 2013-10
・平城京における日神信仰--都祁氷室神社と春日大社の創祀をめぐって  岡村 孝子 日本宗教文化史研究 14(1), 52-65, 2010-05
…などなど。ちなみに全部未読!_(。_゜)/
検索キーを変えてみたらもっと出てくるかも知れないなあ。

以前からちょっと気にはなっていたのですが、この機会に改めて考えてみました。
なお、くどいようですが、この件に関してはかなりの量の論文が出ているのですが、全部未読です。かぶりご容赦(ヲイ)

※気になる方は「つづきはこちら」をクリック



春日大社の不思議は、藤原氏の氏神!…を名乗っている割りには、氏寺の興福寺が平城京移転すぐに建立が始まったのに対し、春日大社ができたのは奈良時代も後半の神護景雲2年(764年)とかなり時代が下がること(春日大社社家の記録『古社記』による 参考『藤原氏-権力中枢の一族』p.127)。これじゃ「本当に春日大社は藤原氏の氏神なの?」と思われてもしょうがないですよね(^^;)
但し、春日大社の辺りで早くから何ぞの神様を祭っていたのは事実のようで、
・天平勝宝8歳(=8年)に描かれた「東大寺四囲図」で三笠山の麓辺りに「神地」という表記がある
・「万葉集」巻19-4210~4211の表題に「春日山で神を祭る」とある この時天平勝宝4歳。
などの史料が残っています。

もともと藤原氏(中臣氏)の氏神である天児屋根命、比売命はともかく、武甕槌命、経津主命はいつから藤原氏と関係ができたのでしょうか?
実は藤原氏の中に、過去に武甕槌命、経津主命を祭っている鹿島神宮・香取神宮と関わりがあったかも?と推定できる人物がいます。それは藤原不比等の三男・藤原宇合。養老3年~養老4年頃に常陸守になっていますが、常陸国こそ鹿島神宮のある場所でした。香取神宮はすぐ隣の下総国(現千葉県香取市)にあり、鹿島・香取は神話でも深いつながりのある神社でした。宇合はこの常陸守在任中に東国の平定で活躍したり、また『常陸国風土記』の編纂に深く関わったと言われています。この時に風土記の鹿島・香取両神宮に中臣氏が関わったという記述を加えたのが宇合と推測されています。
なおこの宇合、常陸守になる直前に遣唐副使として唐にも渡っています。この第9回遣唐使は遣唐使史上ではまれにみる事故のない使節でした。

おそらくは、国内での数々の遠征などに活躍した藤原宇合によって(或いは宇合にあやかろうとしたり宇合を偲ぼうとした人によって)平城京を望む東の山・三笠山の辺りに武甕槌命・経津主命が勧請されたのではないでしょうか。天平勝宝4年に春日山で神を祭ったのは、実は第12回遣唐使の無事を祈願するためだったのですが、宇合が無事に唐から帰還したことにあやかろうとした物と考えられます。ただ、この時に無事を祈願されたはずの藤原清河は結局唐から帰還することができず客死しています…。
ともかく。こうして、その祭りの範囲が東国の平定・平穏を祈ることから海外旅行安全ヾ(^^;)など、ドンドン広がります。

そして、藤原仲麻呂の乱や道鏡の台頭など不安定な状況が続く神護景雲2年。国内の安定を祈願する称徳天皇が、霊験あらたかな武甕槌命・経津主命を祭る神社の建立を、当時政権筆頭だった藤原永手に命じたのではないかと。
このとき、永手は藤原氏(+中臣氏)の氏神である天児屋根命・比売命も合わせ祭ることを願ったのではないでしょうか。というのも、春日大社の立地と枚岡神社の立地は平野の東の山の中腹にあるところがかなりよく似ているのです。春日大社のあるところからは平城京が見えますし、枚岡神社からは大阪平野(この当時は難波京があった)が一望のもとです。このような好条件の立地に自分の氏神を置きたいのは当然でしょう。本来は東国の武神を祭っていた場所に、いくら当時一番勢力があった貴族・藤原氏とはいえ、その氏神も一緒に置くというのはかなりのわがままとも考えられますが、この頃の称徳天皇は無理矢理にでも道鏡を次期天皇にすることを熱望していたと考えられ、藤原氏の助力を期待して、この要望をあっさり受け入れたのではないかと考えます。

こうして現在まで続く春日大社が成立したのではと考えます。

ちうことで、春日大社では本体はあくまで武甕槌命・経津主命。天児屋根命・比売命は後からお邪魔したお客様(^^;)でした。順番が後になるのはこれが理由でしょう。
一方の枚岡神社では社伝で「あとから武甕槌命・経津主命を勧請した」と伝えています(※枚岡神社は度重なる火災でちゃんとした社伝文書が伝わっていないそうです)。もともとは藤原氏(+中臣氏)の氏神にしか過ぎなかったのですから、武甕槌命・経津主命がいなくて当然。春日大社の発展とともに後からやってきたので、枚岡神社では、武甕槌命・経津主命の順番が後になったのでしょう。



こういう複雑な過程を経て成立した春日大社。
成立の経緯が複雑なことから、春日大社建立から200年ほど経った平安時代中期ではみんなにも藤原氏・中臣氏のルーツが分からなくなってしまったようで、当時の歴史物語『大鏡』では
「藤原鎌足は常陸国で生まれたので」
とまで書かれる始末。というか、これに引っかかっているプロの学者も多いのですよ…田村圓澄さんとか加藤謙吉さんとかうわ何を
私は藤原氏(中臣氏)は、所詮継体天皇が登場したときに便乗して登場した北摂・河内を地盤としたにわかヾ(^^;)だと思うんですが。上山春平氏が『神々の体系』で指摘したように「天児屋根命は元々は昆陽(“こや”と読む、現在の兵庫県伊丹市付近)の地場神であって、そこに「天」とか「根」という装飾詞が着いただけ」というのはするどい指摘だなあ、と同意するんですが。

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自己レスです
上記で紹介した上山春平さんの本ですが、『神々の体系』じゃなくて『埋もれた巨像』の方でした(滝汗)失礼致しました…。ちなみにp.192で言及されてます。

ただ続きを読んでみると、上山氏自体は田村圓澄氏の「鎌足常陸国出身説」に同意してそうな雰囲気がが(^^;)

…文中で挙げた論文は今コピーを取り寄せ中なので、後日改めて感想を書くかも知れないし書かないかも知れない(^^;)
ばんない 2018/04/04(Wed)15:23:04 編集
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