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拙HP「戦国島津女系図」の別館…のはず
大河ドラマというのは恐ろしいジャンルでして、
これのネタになると、必ずネタ元が子供向け伝記化されるという(苦笑)

今年のネタ・黒田官兵衛も例外ではなく、地元の図書館を検索しただけでも子供向け伝記が6冊…
しかも発行年はすべて去年か今年である⊂(。Д。⊂⌒`つ
恐るべし大河ビジネス!ヾ(^^;)

しかし、歴史ヲタとして興味があるのは
黒~ゐ部分も多い黒田官兵衛という題材をいかにお子様ランチに仕立てているか?ということである。
本家大河では、例の如く「官兵衛様すご~い」が目立ちすぎて見苦しい点が多々ありますが…
では、お子様向け『黒田官兵衛』はどのような世界なのか?見てみよう!

今回ネタになるのはこの4冊
   
このうち1冊はマンガです(爆)

(1)官兵衛の幼少期
14歳でお母さん(明石則実女)を亡くし、一時期和歌の世界に逃避した物の、教育を担当していた僧侶・円満房のいさめによって立ち直る…と言うエピソードはすべての本で描かれていました。
比較的詳しく書かれていたのはポプラポケット文庫とフォア文庫で、特にフォア文庫は黒田家の発祥(近江国守護・佐々木氏の別れであること、一時期備前国福岡にいたこと、目薬で一山当てたことなど)について非常に紙幅を割いています…ただ「佐々木氏支流説とか(岡山県の)福岡にいた話とか目薬とか実は全部眉唾だったんです」説が今は主流のような(汗)。ポプラポケット文庫では明石則実女について近衞家の親族であることを書いていて「冗談でしょ~」と思っていたら、ホントらしい(○。○)(参考『黒田官兵衛 - 「天下を狙った軍師」の実像 (中公新書)』)
(2)栗山善助との出会い
官兵衛から例のお椀ヘルメットを相続するほど重要視された栗山善助こと栗山利安との出会いについては講談社火の鳥伝記文庫以外の3冊で記述。内容はそれぞれにおもしろおかしく脚色されてますが。しても何でこの話抜いたのか、講談社よ…。
(3)小寺政職の近習に
これもすべての本で触れられていたエピソード。ただ内容は「政職の近習として仕えるようになりました」と1行で済ませている物(コミック版日本の歴史)から「政職が姫路城に来たときの対応が素晴らしかったのでetc」と詳しく書いている物までいろいろ。
(4)櫛橋光との結婚
これもすべての本で書かれていました。と言うかこれ書かないでどーする(^^;)殆どの本があっさり「結婚しました」で終わっている中で、脚色も入れて詳しく書いたのがポプラポケット文庫。ちなみにポプラ版の著者・藤崎あゆな氏は萌え系アニメの脚本家として有名らしいです。ナルホドヾ(^^;)
(5)黒田長政誕生
これもすべての本で書かれていましたが、すべて記述はあっさり。ところで長政の誕生はすべての本で書かれているのだが、次男・熊之助について書かれた本は1つも無し。熊之助が不憫じゃ…(´;ω;`)
(6)青山・土器山の戦い
これはすべての本で触れていました。大勝と大敗と一度に味わい、後の官兵衛に非常に影響を与えたと言われるこの戦い、詳細に描いている本が多かったです。ただ、浦上宗景とかその背景に織田信長が居たとかいう話はどの本もはしょってました_| ̄|○
(7)織田信長との遭遇
その後、官兵衛は小寺家の家中で一人だけ毛利家ではなく織田家に着くことを主張、その意見が通ったために織田信長の元に派遣されます。これも大事な話(何しろこの時に「圧切」という現在国宝の刀を貰った)なのですべての本で触れられてました。ただポプラポケット文庫とフォア文庫では「官兵衛は信長の前で播磨国の情勢を詳しく分析して説明した」とあるのですが、実際は信長にはそんな話聞いてる暇無かったよと言う話が事実なようで(^^;)
また、コミック版では「この後帰国した官兵衛は信長の意向を受けて、毛利方についていた播磨の武将達を織田側にした」とまで明言してますが、これも上記(6)で述べたように以前から織田側に付いていた武将は意外に多かったようで事実ではないです(残念?!)
なお、すべての本でこの時に官兵衛は初めて豊臣秀吉(当時は羽柴秀吉)と知りあったとしていました。講談社火の鳥、ポプラポケットではそこに加えて荒木村重が取り次ぎ、竹中半兵衛ともこの時知りあったと書いています。この辺りの記述が一番詳しかったのはフォア文庫で、岐阜では武井夕庵という荒木村重と知り合いの商人が官兵衛の世話をしたと書いています。
(8)英賀合戦
青山の戦い同様、少人数で大軍を破ったという官兵衛の代表的な合戦の一つです…が、講談社火の鳥では記述全くなし_(。_゜)/
(9)松寿丸(長政)人質に
これも大事な話なのですべての本で書いていたのですが、なぜ家臣の官兵衛の息子が人質になったのか?という記述は本によってバラバラで「織田家の関心を買うため政職に人質を出すように進言したら、逆に官兵衛が人質を出すよう逆ギレされた」(コミック版)「小寺政職の息子/氏職が病弱だったので」(ポプラポケット)と言うオーソドックスな物から「政職の息子/氏職が人質に出せないほど馬鹿だった」(講談社火の鳥伝記文庫)というかなり酷い物まで(^^;)
(10)秀吉の播磨攻め
この辺りの記述の濃さは本によってかなりバラバラで、佐用城攻め、別所重治救援など詳しく書いている物(ポプラポケット)もあれば、ほぼ省略(○。○)(コミック版)というものまで。官兵衛が姫路城を秀吉に明け渡したことには触れていた物が多かったですが。
(11)有岡城幽閉
黒田官兵衛の生涯で一番重大事件なので、これ書いてない物は一つもありませんでした。又、この時牢屋の窓から垂れ下がる藤を見て感動した…と言うエピソードはポプラポケット、フォア文庫、コミック版で触れられていました。が、官兵衛が出獄後に黒田家の家紋を巴藤に替えた(これはポプラポケットとフォア文庫が記述)というのはどうも現在の研究では眉唾らしいうわ何を(ry
(12)鳥取城の干攻め
これはポプラポケットとフォア文庫では書かれていましたがコミック版は文章のみ、講談社火の鳥では完全無視(^^;)まあ、これも見ようによれば黒歴史ですしねえ…
(13)備中高松城水攻め
これはこの後の中国大返しと共に官兵衛の人生最大の見せ場であり、すべての本で詳しく記述されていました。
(14)中国大返し
(13)の最中に織田信長が本能寺の変で横死し、動転する秀吉に対して官兵衛は「殿、これはまたとない機会ですぞ」と毛利との交渉をとりまとめ、明智光秀に大勝した…という超有名すぎるエピソード。当然書いてない本はありませんでした!ただ、講談社火の鳥、ポプラポケット、フォア文庫では「この時官兵衛は毛利氏や宇喜多氏から軍旗を20本ほど借り受け、あたかも秀吉軍に毛利・宇喜多軍が合流したように見せかけ光秀を攪乱した」という旨の記述があるのですが、これは事実なんでしょうか?ネットではいくつかそういうことが書いてあるところもありましたが…。
(15)九州御動座(九州征伐)
この前の四国(長宗我部)攻めと共に官兵衛が活躍したこの戦い、一番記述が詳しいのは講談社火の鳥で息子の長政のことも絡めながら記述。次に詳しく記述しているのがフォア文庫。合戦に関して割と詳細に記述してきたポプラポケットが何故かこの辺に関しては簡単に説明だけで終了。コミック版はヒトコマで終わり_(。_゜)/
(16)秀吉との仲の険悪化
秀吉「わしの死んだ後誰が天下取るか分かるか?」家臣A「徳川殿ですか?」家臣B「毛利殿でしょうか?」秀吉「どいつもこいつもわかっとらん、わしの死んだ後に天下取るのは官兵衛じゃ」…この話を人づてに聞いた官兵衛は秀吉に嫌われてると悟り、引退しようとした-これも有名すぎるエピソードなので絶対書いている…と思いきや、コミック版ではなかったことになってた_(。_゜)/
(17)宇都宮一族暗殺事件
はい、予想通りすべての本で完全黙殺!ヾ(--;)その中で、注記とは言えそういう事件があったことを書いていたポプラポケットはまだ良心的な方でしょう…
(18)小田原攻め
丸腰で和平の使者を務めたというこの話も官兵衛の人生の中の見せ場の一つであり、すべての本で記述されてました。ただ、講談社火の鳥では「官兵衛は氏政始め武将達の命も保証する」方向で話をまとめてたのに秀吉に無視された、つー大河ドラマと全く同じ展開になってたのですが、これ本当なんでしょうか?
 ※この後は本によってかなり省略が酷いことになってます(^^;)
(19)朝鮮出兵
実はこれにも官兵衛はかり出され、しかも途中でどういう事情か秀吉の諒解無く帰国したために処刑される可能性もあったことは大河ドラマでも(改竄が激しかったけどw)描かれていました。
さて子供向け伝記ではどうなってるかというと…コミック版では完全省略_(。_゜)/フォア文庫では朝鮮出兵があったことは書いている物の官兵衛と秀吉のトラブルには触れず。詳細に描いていたのは講談社火の鳥とポプラポケットかな。なお、講談社火の鳥とポプラポケットではこの時に石田三成と険悪になったという記述になっていますが、実際はどうだったんでしょう?
(20)九州の関ヶ原
官兵衛人生最後の見せ場!…のはずなんですが、何故かフォア文庫ではその存在を完全無視(○。○)他の3冊では当然記述されていましたが…。異色の内容は講談社火の鳥で「官兵衛は次の天下は徳川家康と見定め、家康のためになるよう立ち働いた」というニュアンスでした。最近の学説ではこの「官兵衛は天下を取る気無かった」説は有力なんですが、実際の所どうだったんでしょうね?(^^;)官兵衛の妻・光や長政妻・栄姫などの救出作戦など非常に詳細に描いていたのはポプラポケット。
(おまけw)
コミック版はともかくとして、子供版なので総じてイラストが多かったのですが、一番ビジュアル的に肖像画に近いのは講談社火の鳥でしょうか。これも厳つすぎですが(爆)後は萌え系と言うことでヾ(--;)

<総評>
個人的には参考文献(ただ『歴史○本』系のムックが多かったのが難w)や地図などが詳しく記載され、内容も詳しかったポプラポケット版がお奨めです。最後に「竹中半兵衛小伝」もついていて2度おいしい?!
コミック版と講談社火の鳥版は臭い物にフタする傾向がちょっと気になりました。特にコミック版は参考文献に一次史料(黒田家文書、黒田家譜)まで書いてる割にこうだったんで…ま、加来さん監修だから仕方ないか?!ヾ(--;)

まだお子様向け黒田官兵衛本はあるみたいなんで、次回「その貳」に続く?

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小田原とドン・シメオン
色々と刊行されていますね。驚きました。東京の書店で『マンガ 黒田官兵衛と宇都宮鎮房 戦国の世を生きる』を見かけた時も愕然としました……全国区進出です。

さて、小田原開城に黒田家が関わったことは、氏直から贈られた宝物が現存していることから確実なのですが、なぜ関係したかは実は不明なんです。1次史料では、氏直の居所で折衝したのは岡田利世、氏直・氏房が駆け込んだのが滝川雄利でどちらも織田信雄の家臣。一方で天正日記・小早川文書では「滝川雄利とともに黒田孝高も交渉に赴いた」とあるので、もしかしたら信雄隊の目付だったのかと推測しています。この後信雄は改易され、赦免された氏直が大坂の信雄屋敷に入るのですから、浮沈は判らないものです。
高村 2014/11/07(Fri)01:55:48 編集
無題
>(17)宇都宮一族暗殺事件・・・

完全黙殺ですか^^;
大河ですら改変創作入れつつも騙し討ちした事は、ちゃんとやったのに^^;

>九州の関ヶ原

をスルーするとは大胆ですね^^;
如水の即席混成軍なんて軍師の面目躍如のクライマックスなのに

>「官兵衛は天下を取る気無かった」説

自分も、この説支持です。
如水と長政の両方とも一貫して東軍として軍行動してますから。
それに当時嫡男のいない長政に万が一あったら黒田家は無嗣断絶のピンチが待ってます。
これから如水が子作りに励んだとしても、秀頼君のような幼君が増えるだけ。
後継者が盤石でない政権の末路は如水は一番判ってるはずです。
と、想像してた^^;

あと本国に残った清正に家康につくように如水が説得したって、サイト上で見かけたんですが出典元が見つからず未確認です。

人の本音って、史料的な裏付けを取るのが難しいですね^^;
チラ裏の与太話なら、いくらでも話せるけど^^
時乃栞 URL 2014/11/07(Fri)22:48:29 編集
re:小田原とドン・シメオン
高村様こんにちは。

実はようやく『黒田家文書』1巻を入手できたのでぼちぼちUPしていこうかなと思っているのですが
文書をちらちら見ている限りでは、確かに九州御動座辺りの文書量はものすごく多いのですが、小田原出兵の辺りの文書は1通か2通ぐらいしかなかったような。
恐らく高村様の予想通り、官兵衛が小田原攻めで果たした役割は島津攻めの時のそれよりかなり小さかったと見て間違いないのではと思います。

氏直はその後、改易された織田信雄の空き屋敷に入居したんですか。それは初めて知りました。でも信雄はしつこく生き延びて大名の末端に復帰したのに、氏直は早世し、北条本家は断絶…哀しい物です。
ばんない 2014/11/11(Tue)13:37:51 編集
加藤清正と『黒田家文書』
時乃栞様コメントありがとうございます。

子供向けの伝記って、いろいろ(ぴ~)な制約がうるさいんだろうな、と今回感じました(爆)

それはさておき、
関ヶ原の合戦の際に加藤清正を家康側に誘ったのは如水かどうかはともかく、清正が如水と一致して活動するように促した徳川側の書状が大量に『黒田家文書』にあることを確認できました。

その後、加藤清正が島津家に対して色々ぐちぐち言っている文書も所収されていて、思わず吹いてしまったんですが…またこのブログで紹介できるかなと思います。
ばんない 2014/11/11(Tue)13:42:51 編集
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