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拙HP「戦国島津女系図」の別館…のはず
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前の話はこちら

取りあえず前の話を読まないとこの先のことがさっぱり分からないので、読んでない方は先に御拝読の程宜しくお願いします

ではまいる


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高嶋の配属された連隊の派遣先は海南島でした。ここでのゲリラ掃討が任務でしたが、炎熱多雨地帯のジャングルでの任務は困難の連続。しかし高嶋は機会あるごとに「聖戦は恩威併せ行われる仁義の戦いである、無辜の住民を虐げるようなことがあってはならない、住民の心を捕らえることは徳と情である」と部隊を強く指導していた(p.93~94)。
高嶋の指導は戦闘ばかりではない。地区ごとに治安維持会を設け住民代表者の声を聞いて常に住民との接触を図り、戦闘で中断していた学校を開放させたり、市場の復興を進めたり、住民保護や山林住民の帰農等々治安の安定に細やかに心配りしたという。
とどめにこんなこともやった
一部射撃を受けてもこれに対して狙いを外して発射し、敵の人命をも尊び、時期を待って遂に降伏させ、1名も血塗らさなかったこともある。
p.94
ほら!前に私は書いたでしょ「悪い人じゃないと思うよ!」って。ここテストにでるからな!アンダーラインしとけよヾ(^^;)
※テストには出ません(多分)
※液晶画面にマーカーでのアンダーラインは禁物です(^^;)
…しかし、弾丸が雨あられ降ってくる中で反撃禁止って…もし私が高嶋の部下なら流れ弾に見せかけて連隊長撃ってしまうかも知れない(をい)
これらの功績は、後に海南島を巡視した土橋勇逸師団長に激賞されてます。ちなみにこの時の作戦で高嶋連隊は戦死者0名だったそうだ。

この功績で、すぐに中央に復帰…と思いきや、そうはなりませんでした(´・ω・`)。昭和16年11月、次に飛ばされたのは第16軍高級参謀兼第三艦隊参謀です。今度は更に南方のジャワ島勤務でした…
が、上司があの名将・今村均でした(`・ω・´)
高嶋はこの今村の元で生き生きと補佐に励みます、っつーか今村がこのジャワ島に現地民優遇のゆる~い軍政をしいていたのは有名な話で、先述のような"皇戦"思想を持っている高嶋との相性が悪いわけがない。
この時の高嶋のユニークな仕事の一つに「第16軍宣伝班の庇護」があります。大宅壮一、大木惇夫、浅野晃などいわゆる文化人100人余りによって構成された「部隊」を実質的にお世話したのがどうやらこの高嶋で、それはこの宣伝班の班長が陸軍士官学校の同窓生だった町田敬二だったからと言うのもあったようです。町田はそれまで高嶋とは疎遠だったようなのですが、このことをきっかけとして同期、というよりはまるで部下が上司を尊敬するかのように高嶋を以後死ぬまで慕うことになります。

その後も結局高嶋は中央に返り咲かしてもらえず…

昭和20年3月からは東部軍管区参謀長となりました。ようやく日本本国での勤務です!…でも陸軍省や参謀本部じゃないけど…。しかし、首都・東京の防衛を担う東部軍の役割は重要でした。とりわけこの頃から米軍の空襲に都度都度遭うようになり、心労もたえなかったようです…

そして8月。遂に日本は無条件降伏することが決定。それを内々聞いた将校達のあいだに不満の声が高まります。と言うのも内地の部隊は本土防衛のために兵力を温存している所が多く、まだまだやれるという意見の方が強かったのです。
8月14日深夜には、これらの強硬派将校が皇居を占拠するという事件まで発生、高嶋が補佐していた東部軍管区司令官・田中静壱大将が自ら乗り込んで説得するという捨て身の作戦で鎮圧に成功しています。
8月24日にもまだ混乱は続き、今度は予科士官学校生徒が川口放送局を占領するという事件が発生します。これも鎮圧に成功します…が、責任の重圧と心労から田中静壱は「東部軍将兵を代表して陛下にお詫び奉る」として自殺してしまいます(○。○)田中の遺言で事後を任された高嶋は、その後も多くの強硬派将兵の鎮圧に奔走することとなります。
-では、当の高嶋自身はこの終戦をどう受け止めていたのでしょう?
実は「生涯を貫き通した私の天皇観も終戦と共に捨てねばならぬのか」(p.94)と絶望の淵に立っていたようなのです。しかし、例の終戦の詔「-朕、爾臣民と共に有り」を聞いて高嶋は思い返します。
我が国は決して負けたのではない、この戦いは、これ以上続けていてはいつ果てるともなく双方共に悲惨な状態が続く。従って戦争の終結を宣言されたのである。諸君は家郷に帰り各々その道を尽くすならば必ずや道は開け、隆々たる日本が復興するであろう。決して早まってはならぬ
p.94
と、主張したようです。…え、戦争に負けてないんかい?(○。○)あの石原莞爾でも負けたと認めているんだが(※「敗戦は神意なり」と言うのを言い出したのは莞爾らしい)
…実はこの発想には先述の仲小路彰が深く関わっていました。
仲小路は終戦直後に、陸海軍統帥部に宛てて『我等斯ク信ズ』と言うパンフレットを配布した。ここで、仲小路は、大東亜戦争の評価は単に武力戦の勝敗だけで決せられる物ではなく、世界の植民地解放、大東亜の復興、人類の共存共栄という戦争目的は達成され、その行動は世界史上最大の業績であると主張した。さらに、全人類絶滅の悲劇を回避して、世界を根本的に一新することが大東亜戦争を真に遂行することに他ならないとして、日本の「国体の心理は大自然の法則である惟神の道である」という法則に則って武力消耗戦を廃棄して、思想戦に向かうことが必要であると訴えた。
p.94~95
…えー、ご理解頂けた方、私にかみ砕いてご説明をお願いしたい(ヲイ)
ぶっちゃけていえば、究極のポジティブシンキングのようにも見えなくもないヾ(--;)

-戦後、高嶋は詔勅の研究に打ち込む一方、兵学から哲学、経済、外交、文化に至る広範な分野にわたって発言をしたそうです。どうも自衛隊には再就職しなかったようですね(年齢の問題かも?)昭和40年頃から陸上自衛隊幹部学校の部外講師を務めるようになります。
昭和46年に書いた「日本国防学建設の必要」で、高嶋はこういう事を主張しています
日本敗戦の最大原因の一つは日本国防学の欠如だと主張し、(中略)旧陸海軍が、フレデリック大王、ナポレオン、クラウゼヴィッツ、モルトケなどの西欧兵学を、しかも形式のみを学ぶことに終始したため、その編成、装備、訓練などが日本の特性を十分に行かしたものとならなかった。(中略)兵学以外の一般諸学は兵学以上に西洋の形式模倣だとし、日本の真の独立は、学問の独立を前駆としなければならない
p.95
そして次のように書いた
日本の創造すべき兵学は、その根本の法則を、先ず数千年来日本民族の踏み来たった歴史、戦史に求め、これを中核とすべきであった。孫子を大宗とするアジア兵学に、幾多のヒントを見いだすべきであった
p.95
「ヨーロッパの軍事学ばっかりじゃなくて、孫子もやっときゃよかった」というのは、他の旧軍人さんもよく書いているので(『陸軍大学校』)別に不思議でもないのだが…ところで「アジア兵学」ってなんじゃ?
ここで言う「アジア兵学」の根源とは、神武天皇が大和御平定の際、太陽に向かって軍を進められたときは破れ、太陽を背にして戦われたときは勝った御東征の史訓から出ている「大星伝」、つまり天地自然の理だった
p.95
⊂(。Д。⊂⌒`つ
ま、まさかとどめに神武天皇が出てくるとは…不覚であった…

昭和52年8月、高嶋は入浴中に不調を訴えて入院、その後一進一退を繰り返し、翌昭和53年9月24日にこの世を去りました。享年81歳。
膨大な蔵書の一部と、幼年学校時代から書き続けられた高嶋の日記は現在防衛省の防衛研究所が所蔵しています。



おまけ
小島威彦の本『百年目にあけた玉手箱』4巻に、高嶋辰彦のことが単独項目を挙げて取り上げられているらしい。
にしても、このブログの方も指摘するように、この高嶋の台詞は実に興味深い。
小島は戦史の専門家としての高嶋大佐に「現在の事変、現在の世界動乱の状況と意味」を問うと、高嶋はそれに答え、小島は彼の言葉を記録している。
(中略)
 「たしかに世界動乱の一環かもわかりませんね。満州事変もアメリカの移民法の改革、排日運動とも関連しているかも知れませんし、ソ連の進出、赤軍の充実と東進とも大いに関連しているでしょうし、また日本の膨脹してくるエネルギーと言いますか、日本民族自身の生命線の危機感とも係わって、世界中の蠢動が渦巻いているようですね。その渦中で自分自身の生の選択を日毎に強要されているような現在に生きていて、私たち一軍人の感覚や智恵では把えられない恐ろしさを感じます。何か世界中が模索しているようで、いわば世界の新しい生みの悩みの声がヨーロッパにもアジアにも激っているようです。」
http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20110907/1315321275
なお、この小島威彦も高嶋に負けず劣らず強烈な人で(^^;)、京都学派のボス・西田幾多郎の弟子の一人で、先述のように戦時中はスメラ学会などに所属し、戦後はその活動歴が「極右」とされて学会の主流から外された方のようです。
で、『百年目にあけた玉手箱』はこの小島90歳(!)の時に書き始められた回顧録なのだが、だいたい500ページぐらいの本が全7巻(○。○)、ついでに発行元の出版社がその直後倒産してしまい⊂(。Д。⊂⌒`つ、国立国会図書館でもこの本を全巻そろえ損ねている模様…
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